「結婚式を未来のパブリックなものに」。体験を通じて伝えたかった「Parkになろう」展 担当者の想いとは

家と家のお披露目の場であった結婚式が2人を祝福する場になって久しく、工夫を凝らしたさまざまな挙式が行われるようになっています。IT技術の進歩や新型コロナウイルスの流行がさらに結婚式の多様化に拍車をかけました。しかし、だからこそ、ウエディング業界もカップルも「なぜ結婚式をするのか?」「結婚ってなんだろう」と考える機会が増えたのではないでしょうか。

結婚式のあり方に大きな変化が生じている今こそ、これまでの歴史を知り、先のミライに想像を馳せてみることで、「結婚」や人生に寄り添う「結婚式」の価値とあらためて向き合いたい──。そんな想いでウエディングパークが企画したのが、結婚・結婚式の価値を捉え直すプロジェクト「Wedding Park 2100 ミライケッコンシキ構想」です。

2021年から始まった特別イベントは今回で3回目。2023年3月下旬に、東京・大阪で特別イベント「Parkになろう −結婚式は未来の新しいパブリックに−」展を開催しました。これまでの2回のイベント開催を経て、「ウエディングを誰もが自由に入れて、遊ぶように体験し、みんなで幸せを共有できるものにするために、公園のような公共性(パブリック)を取り入れてみてはどうか?」という想いから、今回は「Parkになろう」というテーマを設定。渋谷区立宮下公園とグランフロント大阪 北館1Fナレッジプラザという誰もが、ふらっと入れる場所で行われました。


イベントが終わった今。改めて、担当者はイベントを通じて何を伝えたかったのか、そして、実際に来場者の反応はどうだったのか。改めて感じた未来のウエディングに対する想いとは──。本プロジェクトを推進する(株)ウエディングパーク 広報・宣伝の飛田剛志と宮﨑かりんが胸の内を語ります。

――今回のテーマを「Parkになろう」に決めた理由を改めて教えてください。

宮﨑:「Wedding Park 2100 ミライケッコンシキ構想」は、2100年という未来に目線を設定し、ウエディングの未来のあり方や結婚、結婚式の価値を見直していくことに重きに置いています。過去2回のイベントを経て、もっと多くの方に結婚式の魅力や結婚、パートナーといることの豊かさなどを考えていただくきっかけを作りたいと思うようになっていました。良くも悪くも、自身の結婚や、周りの結婚、もしくは結婚式への参列などの体験を経ないと、結婚や結婚式について考えるきっかけがないという状況があり、またイベントで「ウエディング」を前面に出すと対象の層が限られてしまいます。しかし、結婚や結婚式というのは誰でもお祝いできるものであり、誰もが考えて良いこと。もっと広くウエディングのことを知っていただける機会をウエディングパークがつくり、より多くの方に結婚や結婚式の未来について考える機会を提供していくことが大切だと考え、今回は「Parkになろう」というテーマ設定をしました。

「パーク(=公園)」には誰もが入ることができ、その場で出会った人と遊んだり、会話が生まれたり、偶発的な出会いがあると思うのですが、ウエディングも誰もが対象で、どんな人でも幸せを共有できるような未来を目指していきたい、という想いもあって設定したテーマです。

――今までのように結婚式自体を前面に押し出したイベントにあえてしなかったということですね。今回、宮﨑さん、飛田さんで「ウエディングエリア」をプロデュースされたと思うのですが、どんな想いがあったのでしょうか。
宮﨑:ウエディングエリアでは、ウエディング企業各社の「みんなが集える結婚・結婚式のミライに向けて大切にしていきたい想い」をパネルにしてご紹介しました。企画を考える中で、イベントに訪れる人の間口をもっと広げたいと思っていました。今まで結婚式に全く接点がなかった方がふらっと今回のイベントに立ち寄ってくれた時に、どういったことを伝えられたら、今回賛同してくださった企業やウエディング業界の後押しになるだろうかと考えました。そんな中、自分自身の体験としてウエディング業界の皆さんの想いに心動かされたことを思い出しました。そこでウエディングエリアでは「どういった想いで日々仕事に取り組んでいるのか」「何を大事にしているのか」といったエモーショナルな展示ならば、きっと来場してくださる方に何か伝わるものがあるのではないかと展示内容を決めたのです。

飛田:Wedding Park 2100では、1回目に108社、2回目は208社にご賛同いただき、非常に多くの方々からも注目いただいていて、昨年は東京都港区が後援してくださるという動きもありました。さまざまな企業や団体に応援していただいている中で、次のステージに向かうためにWedding Park 2100をよりパブリックなものにしていきたいという想いを打ち出し、今回、最終的に417社にご賛同いただくことができ非常に手応えを感じました。
結婚式に触れたことない方が、自然と結婚式に触れるきっかけを作っていくという場面では、勉強や理解を求めるような形ではなく、体験に重きを置きたい。そして、ときめいてもらいたいという想いがあった中で、ウエディングエリアでは写真展示を行いました。こちらは50社からエントリーいただいて、今までと違うアプローチが実現できたのではないかと思っております。

――今回はZ世代のメンバーが多くの展示を作成されていますね。

宮﨑:誰でもと言いつつも、若い人に我々の想いを届けるにはどうしたらいいかということはひとつの課題でした。そこで、Z世代のクリエイターにまかせることにしたのです。
プロポーズの言葉を作れる「ふたりのサイコロ」では、サイコロの面に言葉が書いてあって、サイコロを複数回振るとオリジナルの文面になるのですが、その言葉選び一つにしても、私たちでは出てこないような言葉が出てきていて、新しいカルチャーを感じました。今までもZ世代や学生さんの考えを展示したことはあったんですが、体験できる形で展示したのは今回初めてで学びも多かったです。

――イベントの反響で印象的だったことはありますか?

宮﨑:以前のイベントで婚礼文化研究家・鈴木一彌先生に監修いただきウエディングの年表を制作しました。そのご縁で、毎回先生がイベントにいらしてくださり、サイコロの説明をしたところ、「日本では、古来から個々の想いを言葉に託し伝え合うことでひとつの想いを作り上げることがなされてきたの。このサイコロは若い子が考えた案なの?」って驚いていらして。「昔から想いの伝え方、言葉を合わせることで同じ想いを確認し合うことを、今の若い子たちも同じに面白く感じるんだね」と、そのサイコロの発想をとても褒めてくださったんですね。昔から変わらないのであれば、もしかしたら2100年もこの感覚は残っていくのかなと思うと面白かったですね。表面的なものは変わっても、根本的なことは変わっていかないのかなとか思いました。

また、来場者の方がウエディングエリアの展示で「この想いが素敵!」と写真を撮っていた場面に遭遇しました。企業のサービス内容の展示がメインだった前回まではなかったことで印象的でしたし、感慨深かったです。社員からも、「この企業さんの想いが素敵だった」とか「私の気持ちとマッチしている」といった声があがってきており、この企画を実施してよかったと心から思いました。

――パブリック性を掲げたことで変化したことはありますか?

飛田:老若男女に入っていただいける会場にしたのが、非常に大きな変化でした。ウエディングエリアの展示すべてを読んでくださる方がいらっしゃったり、砂場をイメージしたボールプールは子どもに大人気でした。ボールの中にメッセージが入っていたので、「お母さん結婚って何?」とか「どうということなの?」というようなコミュニケーションがご家族の中でも生まれたりして、非常に理想的な展開だったと振り返っています。

また、今回はウエディング業界外の方からも反響がありました。宮下公園を管理されている会社の方から「公園という場を最大限に生かしたイベントは非常に嬉しいし、参考になる」と言っていただいたり、街づくりをされている企業が足を運んでくださったり。大阪でもグランフロント大阪の施工に携わっていたという方がいらして「イベントスペースを公園みたいに使ってほしいという想いがあったから、今回このイベントを見てすごく嬉しかった」と、わざわざ伝えてくださいました。そういう声を多数いただけたのは自信にもつながりましたね。


グランフロント大阪で開催された「Parkになろう」展。(写真:山元裕人)

――イベントを通じて、来場者の方に伝えたかったことは伝わったという手応えを感じていますか。

宮﨑:ウエディングや結婚式は対象が決まっているイメージがあって、自分は対象外だと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、海外のウエディングは、公園や市役所などの公の場で結婚式やパーティーを挙げられる場所があるんですよね。例えば、ニューヨークのセントラルパークで開かれている結婚式に偶然にも遭遇した人たちが、自分たちの知り合いではなくても「おめでとう!」と拍手を送り、人の幸せをお祝いしています。結婚式をパブリックなものにすることで、少しでも結婚っていいなとか、結婚式って素敵だな、お祝いすることで幸せを共有できるんだな、ということを伝えられていると嬉しいなと思います。

今回は体験をして楽しんでもらうことが一番の目的でしたが、「楽しいイベントだったな、今日はなんかいい日だったな」と振り返った時に、イベントで持ち帰ったものを見て、ひとりでも多くの方が結婚について考えていいただけるきっかけになっていると嬉しいです。


「1,000人のフラワーシャワー」で開催されたワークショップでは、オリジナルのフラワーカプセルが制作できた

飛田:Z世代を対象に結婚に関する意識調査を取ったことがあるのですが、結婚式に参列したことがある人と、参列したことがない方では、参列したことがある人の方が結婚意向も結婚式意向も顕著に高かったんです。結婚式を体験すると憧れや理想が高まっていく。でも、やはり今、社会的な流れにコロナも相まって結婚式自体が少なくなっている中で、体験しないとわからない価値や魅力をどう届けていくか。その体験を増やすのも今回の狙いのひとつでした。今回のイベントでの体験を通して、少しでも結婚や結婚式の話題が増えていくことを期待しています。

――2100年の結婚式はどんなものになっていると想像されていますか。

宮﨑:望む人が理想を叶えることができる世の中になっているからこそ、このイベントを通じて、どういう結婚式であってほしいか、どういうウエディング業界の未来を描いていきたいのかと考えるきっかけにしたいですね。

個人的には2100年であっても、大きなスタイルは変わらないだろうなと思っています。今回のメタバースの展示のように時代の変化に合わせて、形は少しずつ変わっていることもありますが、根本的なことは変わっていない。大切にしてきたことは、今後も変わらないのではないかと思っています。

飛田:「Wedding Park 2100」プロジェクトのステートメントでは「『祝う、分かち合う、感動する』未来の結婚式を体験する。」を掲げています。祝うこと、それを誰かと分かち合うこと、そこで感動が生まれて、その人自身が豊かになっていくことが結婚式の最大の価値であり、魅力を感じるところだと思います。結婚式のやり方や型式は変わっていきますが、本質はそこに変わらずにあるのではないかと思うんですよね。コロナ禍もそうですが、社会的な影響で変化はあれど、根本の「祝う」こと、「分かち合い感動していく」ことは、この先も変わらずあってほしいと個人的にも思います。

結婚する・した2人がいないと始まらないのが「結婚」ですが、そこも取っ払ってしまって誰かのことを祝い、幸せを共有する文化になっていったらと個人的には思います。それが人生にとって、より重要度が増していくような未来になっていくと、結果的に平和や豊かな社会につながっていく。祝う、分かち合う、感動する部分は変わらずあってほしいですね。

――改めて、今回のイベントにお越しくださった方々にメッセージをお願いします。

宮﨑:ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。少しでも結婚式の未来にときめいて、イベントに来た日が皆さんにとって何かのきっかけになる日、思い出に残る日になっていたら、とても嬉しいです。そういったイベントをこれからも作り続けていけるように頑張ろうと思います。

飛田:まずはご来場いただいた皆様には感謝をお伝えしたいです。特に東京は屋外での開催で天候もなかなか不安定な中でしたが、来場、体験いただけた方には、「幸せの共有体験」を持ち帰っていただけたのではないかと思っています。そして、ウエディング、結婚や結婚式について考えるきっかけになっていたらとても嬉しいです。

結婚するもしないも、結婚式を挙げるも挙げないも自由だと思っていますが、我々は、結婚や結婚式の価値は高いと思って、皆さんにいろいろと触れていただくきっかけ作りをしています。結婚や結婚式を通じて、自分の人生と向き合うきっかけになるような取り組みを、これからもプロジェクトを通じて社会に発信していきたいと思っています。

今後、バーチャルツアーなども展開予定です。ご来場いただけなかった方にもオンライン上で、当日の様子や我々が発信したかったものは追ってお届けしようと思っておりますので、そちらも楽しみにしていただけたら嬉しいです。

( 取材:大井あゆみ  文:田中いつき/写真:関口佳代 / 企画編集:ウエディングパーク