「しゅき」、「ぴ」…転がす体験を楽しみ、会話がうまれる余白をつくる」Z世代コピーライターが手掛けるプロポーズのことば『ふたりのサイコロ』」制作秘話
新型コロナウイルスの影響によって、さまざまな場面で変化が求められています。そんな今だからこそ、あらためて結婚式の本質と向き合い、結婚式の未来を構想しようという想いをこめてウエディングパークが発足したのが、結婚式の価値を捉え直すプロジェクト「Wedding Park 2100」です。
2023年3月には、東京・大阪にて、プロジェクトとして3回目となる特別イベント「Parkになろう −結婚式は未来の新しいパブリックに−」展を開催。さまざまな企業とコラボレーションした「アートエリア」、Z世代クリエイターが手がける「Z世代エリア」、メタバースで結婚式を体験できる「メタエリア」で構成され、多くの反響を呼びました。
イベント終了後にお話をうかがったのは、「Z世代エリア」展示内の「Z世代コピーライターが手掛けるプロポーズのことば『ふたりのサイコロ』」にてコピーを担当した読売広告社のコピーライター・辻 いおりさん、ビジネスプロデューサーの鈴木 萌恵さん。お二人に制作秘話をうかがいました。
プロフィール
◆読売広告社 コピーライター・プランナー 辻 いおり
1997年生まれ。
「人の心も体も動く、その手があったかと感じるアイデアを出す」ことを念頭に
コピーライティングなどの広告制作を担当。
自動車、飲料といった多岐にわたる案件へ参加。
◆読売広告社 プロデューサー 鈴木 萌恵
1997年生まれ。
「自分らしさを大切に」をモットーに、日々広告プロデュースに励んでいます。
飲料、食品、化粧品など幅広い業種を担当。
ーー辻さんが今回のイベントのお話を受けたときの第一印象を教えてください。
辻:今回お話をいただいたとき、率直に「素敵な取り組みだな」と感じました。僕自身が1997年生まれの25歳ということもあり、結婚は人生の分岐点であり大きなイベントとして考える、ターゲットのど真ん中なので、すごく自分ごと化ができる企画だなと思いました。
僕はコピーライターとして日頃は広告制作をしていますが、今回のような新しい価値観や文化を作ろうというウエディングパークの試み自体が広告制作を超えた企画ということもあり、こういったことにチャレンジできるのも新鮮でした。
ーー『ふたりのサイコロ』を制作する際に意識したことを教えてください。
辻:今回は来場者に楽しんでもらうのが目的だったので、作った表現を楽しんでもらうよりは、その場で何か会話が生まれるようなコピーを意識しました。
鈴木:せっかく会場に来ていただけるのであれば“体験”を楽しんでもらいたいと思い、サイコロという偶然性を生み出すものに委ねることで新たな言葉を生む仕組みを考えました。サイコロで採用するコピーは、チームで話し合い、100個以上出したんです。Z世代の考えるプロポーズの言葉なので、身近にあふれているコピーにしようと思い、あえて机には向かわずお風呂のなかでリラックスしながら考えたりしたのを覚えています。
辻:皆さんと話し合うなかで「サイコロのように転がして考えられる」「それぞれの解釈に委ねられる」、そんなコピーがいいんじゃないか、という意見が出て、余白を意識したコピーを考えました。サイコロで作れるコピーの組み合わせは全部で164通りあるのですが、サイコロを振ったお客様の想いや考えていることが出てくるような仕組みも、コピーを考えるうえで意識したポイントではあります。
実際に展示された『ふたりのサイコロ』のコピー
ーーなるほど。参加者の“体験”を中心に考えられたのですね。
辻:「結婚や結婚式っていいよね」という気持ちを持って帰っていただくことはもちろんのこと、宮下公園やグランフロント大阪といった“場”を使ったイベントなので、見て楽しむというよりは、空間のなかでしっかりと機能する、実用的なコピーとして楽しんでもらいたいと思っていました。
鈴木:結婚に関する価値をもう一度考え直すきっかけになればいいな、という気持ちはもちろんあるのですが、同時に、ただ「楽しかった」と思っていただくだけでも嬉しいとも思っていました。さまざまな年齢層・性別のお客様がくるからこそ、心のどこかに少しでも思い出として残っていたら嬉しいなと。
ーー会場で印象に残ったエピソードがあったら、教えてください。
辻:実際に会場にうかがったときは、子どもがサイコロを転がしていて、そのサイコロで出たコピーを見ながら、お父さんやお母さんが「今日お花を買って帰るか」といった会話が生まれていた場面に遭遇しました。コピーを作るときに、自然と会話につながるような仕組みを考えていたので、「狙っていた通りになった…!」と思い、嬉しかったです。年齢や属性を選ばない方々がたくさん集まっていたのも印象的でした。
鈴木:小さな子が靴を脱いでサイコロで遊ぶ光景を見かけたのが印象に残りました。その光景を見て「これこそパークだな」と腑に落ちた感覚があったんです。もちろん、作り手としてはサイコロを振ってほしいですし、コピーの意味もわかってほしいのですが、お客様がいろんな遊び方を生み出すところを見て、素敵な光景だな、と。たくさんの人が集まるパークだから見られた光景だったと思います。
ーー貴重なお話をありがとうございました。それでは最後に、おふたりにとって『2100年の結婚式』がどんなものになっていると想像されるのか、教えてください。
辻:2100年の結婚式は、場や時間の制約といったさまざまなことの、ハードルが下がっているといいな、と思います。
現状は、お金の問題もあるし、コロナ禍だったらそもそも人が集まれるかどうかといったネックがあったりもします。結婚はすごく大事なもので、重たく、真面目なものだからこそ、そういったハードルがもう少し取り払えるような形になっていくといいのではないでしょうか。
あとはジェンダー問題も含めた属性が関係なくなっているといいなとも思いますね。それこそ「Parkになろう」のコンセプトと一致するような2100年がきてほしいです。
鈴木:今の「当たり前」を取っ払えるような結婚式が行われているといいな、と思います。
たとえば、結婚式で定番になっている「ファーストバイト」も、お互いに食べさせ合う選択肢が選べる未来になっていてもいいんじゃないかと思うんです。慣習だからという理由で従来のまま行うのではなく、自分たちらしいやり方を選ぶことができたらいいですよね。選ぶことに対してのハードルが低くなっているといいなと思っています。
( 取材:大井あゆみ 文:高城つかさ/ 写真:関口 佳代 / 企画編集:ウエディングパーク)