ともに生きる地球を想う2100年の食。「ふりかけ」で表現された今も未来も変わらない、婚礼料理に込める願い
新型コロナウイルスの流行によって、さまざまな場面でオンライン化が急速に進んだ2020年。“新しい生活様式”は、「結婚式」にも大きな影響を与えました。オンライン式場見学、結婚式のLIVE配信など、新しいサービスがいくつも誕生しています。
あらゆる場面で変化のスピードが上がる今、あらためて結婚式の本質と向き合おう、そして結婚式の未来を構想しよう──そんな思いでウエディングパークが企画したのが、結婚式の価値を捉え直すプロジェクト「Wedding Park 2100」です。
「Wedding Park 2100」プロジェクトでは、結婚式の未来を「体験」していただくために、2021年3月19日から21日にオンライン・オフラインハイブリッド型のイベントを開催。過去から現代までの結婚式の変化を知れる「イマ」エリアと、「2100年の結婚式」をテーマにした作品を集めた「ミライ」エリアで構成された展示は、イベント会場への来場と、バーチャルツアーやYouTubeの視聴などをとおして、数百名に体験していただきました。
このイベントに合わせて、「2100年の結婚式」をテーマにした料理を用意してくださったのは、株式会社八芳園です。イベントに来場された方へのお土産として「スーパーフード ミライふりかけ」を作っていただきました。
考案されたのは、八芳園総料理長の西野剛さん。当初はふりかけではなく別の案を考えていたという西野さんは、「2100年の結婚式」のテーマからどうやってふりかけに行き着いたのでしょうか。八芳園が婚礼料理と向き合う上で考えていることと、ふりかけに込めた願いを聞きました。
(※ 取材は2021年3月18日に、イベント会場で実施しました)
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■ プロフィール
西野 剛(にしの つよし)
1967年生まれ。ホテルでの経験を積んだ後、渡仏。フランスの三ツ星レストランで腕を磨き、帰国後は外資系ホテルなどを経験し、八芳園へ入社。現在、総料理長を務める。
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「2100年の婚礼料理」のお題から「ふりかけ」に行き着くまで
八芳園が開発した第3の参列スタイル「リビングルームウエディング」にて提供している料理も西野さんが考案
── 今回は「2100年の結婚式」をテーマに婚礼料理を考えていただきました。テーマを聞いて、どのようなアイデアを考えられましたか?
「2100年」と聞くと未来のイメージが強いので、現在ブームになっている「未来食」のように、海外で多く食べられている昆虫食が最初にぱっと思い浮かびましたね。あとは、大豆ミートに乾物でうまみを追加して、お肉に見立てた一品も考えていました。
ただ今回は、イベントに来場された方が持ち帰られるお土産をつくる、ということだったので、テイクアウトならどのような形がいいのか、パン職人やお菓子職人にも相談しています。賞味期限の問題を考えながら、今までにないものをつくっていこう、といろいろな案を考えてみました。
自然にある食材をピューレにして、あんこでくるんでワンタンにしてみたり、品質は十分でも規格から外れているために廃棄されてしまう野菜をパウダーにしてみたり。きんつばもつくりましたね。
── さまざまなアイデアがあったんですね。最終的にふりかけに至ったのは、どのような背景があったのでしょうか。
実はこれは、八芳園の従業員食堂で以前から出していたふりかけを発想のベースにしています。我々はフードロスを減らす観点で、料理でだしをとるために使ったかつお節や昆布をふりかけにしていました。
その従業員食堂のふりかけをベースにして、じゃこや生姜、野菜を乾燥させたパウダーも混ぜています。どんな食材を追加すると「2100年」を表現できて、SDGsの観点を取り入れながらおいしく召し上がっていただけるのかを考えて調合しました。食のロスが満足に変わる時代になることを願いながら作っています。
婚礼料理を誰もが安心して食べられるように
八芳園総料理長・西野さん
── 社内ですでに実践されていた、フードロスへの取り組みがきっかけになったんですね。
そうです。八芳園ではグローバル企業の宴席をお受けすることが多く、ここ5〜6年で海外のお客様からSDGsへの注目が高まってきていることを感じていました。ですからフードロスだけでなく、食のバリアフリーを目指して、アレルギーや宗教上の理由によって食べられない食材があるお客様への対応をひとつずつ進めています。
今では「地産地消」という言葉が当たり前のように言われていますが、生産者の顔が本当に見える食材を選べるように、国産のものを極力使うこともこの取り組みの一部です。どなたにも安心しておいしいと感じていただけることを目指しています。
── 「スーパーフード ミライふりかけ」にも、国産のものを使われたのでしょうか?
はい。婚礼料理では、カップルが育ってきた環境を料理で表現できるお食事に仕上げるために、おふたりの出身地の食材を使っています。今回のふりかけにも、2100年に結婚式を挙げているカップルを想像して、かつお節のように海のものと、野菜やきのこのように山のものを両方使っています。
「記憶」に寄り添い、食で表現する
── 婚礼料理に地元の食材が使われていると、カップルの思い出を引き出してくれそうですね。
そうですね。この「記憶」にまつわる部分は、婚礼料理において最も難しいと思います。八芳園でも食とITを融合させる「フードテック」の分野を開拓していて、調理や配膳の一部にロボットを取り入れる準備中です。ロボットだと味気ないかと言われればそうでもなく、むしろ安定しておいしい料理を提供する手助けをしてくれるでしょう。
ただ、「お母さんがよく作ってくれた卵焼き」や「今はなくなってしまった地元の名物」のように、「記憶」にしかないものを再現するのは、人間にしかできないことです。カップルのお話をもとに食材を探し、ベストな調理で表現する。時代が進んでも、記憶に歩み寄って「食」というアウトプットに変える婚礼料理のあり方は変わらないと考えています。
── 大切なものを貫きながら、時代に合わせた手法を柔軟に取り入れていらっしゃることが伝わってきます。
最近でいえばコロナ禍で結婚式のあり方が急激に変化したので、我々もその速いスピードに合わせて料理を変化させている状態です。たとえば今は、結婚式を終えて1週間後のカップルにお届けするアイテムを考えています。式を振り返るタイミングを設けることで、より深い関係を築いていただけたら嬉しいですね。
── 今回ご用意いただいた料理も含めて、時代が移り変わっても揺らがない婚礼料理への願いが伝わってきました。
私は毎週、ご見学のお客様に試食を提供して、現場に立つようにしています。新型コロナに関してもさまざまなご意見をお持ちのお客様がいらっしゃるので、できるだけリアルな声を聞きたいんです。その上で、今後もできる衛生対策を整えて、おふたりに寄り添った料理を安心安全に実現していきたいと思います。
(文:菊池百合子 / 写真:土田凌 / 取材・企画編集:ウエディングパーク)
■2100年の結婚式をテーマにした食事 八芳園
「スーパーフード ミライふりかけ」
2100年のウエディングでは、今よりも食のロスが満足に変わり、素材や生産者の想いを余す事なくお愉しみいただけるそんな時代となるように、おふたりが選んだ婚礼料理に使われた野菜の葉や出汁を取るための素材を使い、体に良い効能をもたらすスーパーフードと合わせてあたらしい調味料をつくりました。
3月19日~21日まで開催したイベントは、現在もオンラインでお楽しみいただけます。
【オンライン開催】イベント会場のバーチャルツアー&音声ガイド、体験リポート動画を公開中!