この先も繋いでいきたい想いがあるーミライケッコンシキ2021ー

新型コロナウイルス流行をきっかけに、新たなスタンダードが生まれているウエディング業界。

ウエディングパークでは、2020年から「ミライの結婚式のために、イマ私たちができること」をテーマに、ウエディング業界に携わる方々に取材を重ねています。

継続的な取材を通して、2020年と2021年では、ウエディング業界を取り巻く環境が変化し、業界全体の雰囲気も少し変わってきたと感じています。

明日を暗中模索する段階を経て、未来へと力強く歩み始めたような印象を受けるようになりました。

業界が変わっていかなければいけないこと、変わらなくてもいいこと。
カップルが変わってきていること、変わっていないこと。

目まぐるしく変化をする時代に、結婚式の真価を見つめ、新しいチャレンジで業界をけん引する企業の皆様の声をご紹介します。

※本記事は、結婚あした研究所「#ミライケッコンシキ2021」シリーズを再編集しています。

◆「結婚式は、もっと多様でいい」ーブライダルファッションデザイナー・桂由美さん

https://kekkon-ashita.weddingpark.co.jp/1183/

日本で初めてのブライダルファッションデザイナーとして、「デザイナー」の域を超えて日本のブライダル文化を築いてきた第一人者の桂由美さん。

桂さんは、結婚式が置かれている状況が一気に変わったコロナ禍でも、ブライダル文化を守って発展させるために尽力されてきました。例えばコロナ禍での結婚式開催。

2021年4月、緊急事態宣言の発表直前のこと。桂さんは業界代表者と共に総理官邸を訪れ、感染対策を行った上での結婚式開催を認めるよう内閣官房長官に要請したそう。これにより結婚式場は休業を免れ、数多くのカップルが予定通り結婚式を挙げることができました。

50年以上ブライダル業界を見てきた桂さんに、コロナ禍のウエディング業界の変化について伺うと、このようにお答えくださりました。

── 1965年にブライダル専門店をオープンされて以来、50年以上にわたって業界をリードされてきた桂さんから見て、ウエディングのあり方はどのように変化してきたと感じていますか?

私は1965年に日本で初めてブライダルファッション専門のデザイナーになる前、海外20カ国の婚礼を視察しました。そのときに海外と比較して最も強く感じたことは、日本は海外と比べて新郎新婦の独自性が式に反映されていないことでした。

海外では新郎新婦によって式のあり方がさまざまなのに、日本はいつもワンパターン。結婚式は自分で選ぶ形式によって変わりますが、本来は自由なはずの披露宴でも、ワンパターンでした。私のお店にドレスを買いに来るお客様も、だいたい新郎新婦の親御さんから「よそ様はどうなさっていますか?」と聞かれてきました。よそと同じような式にすれば、恥ずかしくないと考えていたのでしょうね。

ですから私は、ブライダルのデザイナーになってから50年以上、一貫して「もっと多様でいい」と伝えています。例えば私が初めてブライダルのファッションショーを開いたとき、個性が際立った7人のモデルさんにお願いして、テーマを「7つの個性をデザインする」というものにしました。大輪のバラのようなドレスから1965年当時珍しかったミニのドレスまで、それぞれのキャラクターに合わせたドレスを制作したんですよ。

そうやって「こんなやり方もありますよ」とファッションショーや著書で伝え続けてきたんですけれど、なかなか多様化していかなかった。それが、コロナ禍で一気に多様化が進みました。50年以上努力してきても多様化しなかったのに、たったひとつの出来事で潮流が変わるんだな、と実感しています。それでももっと、さまざまな選択肢があっていいと思いますけどね。

◆「社員一人ひとりの思いで未来のお客様を幸せにする」ーディアーズ・ブレイン 小倉翔童さん、豊島仁彦さん

https://kekkon-ashita.weddingpark.co.jp/1203/

ハウスウエディング事業を主軸とし、ドレス事業、レストラン事業、コンサルティング事業を展開している株式会社ディアーズ・ブレイン(以下、DB)。

新型コロナウイルスの影響から結婚式を挙げたくても挙げられないカップルが増え、厳しい状況が続くなか、DBでは未来のお客様を想像しながら、社員一人ひとりの視座と原動力を高める取り組みが行われていました。

ウエディング事業本部 兼 人材開発部に所属する小倉翔童さんと、ウエディング事業本部 東日本ウエディング事業部統括マネージャーを務める豊島仁彦さんに取り組みの背景を伺うとこのようにお答えくださりました。

ーーお二人から見て、今後、ブライダル業界にはどのような人材が必要になってくると思いますか?

小倉:ウエディング業界は特にコロナ禍でダメージを受けていますが、そんな状況下でもベンチャーマインドを持って積極的に挑戦をしたり、結婚式の本質的な価値と向き合い、人としての成長意欲を持てるかが大切だと思いますね。

規格外のことにも挑戦する精神があったほうが、DBとしては面白いだろうなと。当たり前の結婚式をやり続ければ業界は衰退していくと思います。それを打破する信念を持つ人たちに仲間になってほしいですね。

豊島:つい先日、代表の小岸から「近未来予想図を描くのは、あなたたち社員のみなさんです」というメッセージが届きました。会社の未来、結婚式の未来を描くのは社員一人ひとりであり、周りから憧れられる存在になってほしいと。ウエディング業界としてではなく、広義のホスピタリティ業界として仕事を楽しんだり、憧れられるほど挑戦を楽しめる人材が求められているのだと思います。

ーー結婚式のニーズやトレンドが急速に多様化する昨今。DBとして、これからどのような結婚式を社員と一緒になってつくっていきたいですか?

豊島:これまでもDBではトレンドを先取りし、枠に捉われない結婚式をつくる意識のもと取り組んできました。その過程で新しい結婚式のかたちも生まれつつありますが、遠くない将来、コロナ前の結婚式のスタイルが戻ってくるのではと予想しています。そのときに最高速でリスタートを切れる準備をする必要があるなと。結婚式の価値は、これからの結婚式に対する向き合い方によっては大きく変わると思っています。結婚式はやはり人が集まらないと楽しくないと思うのか、集まらなくても最高の結婚式はできると思うのか……私たちの結婚式の作りかた次第で変わってくる。コロナから戻るタイミングで、カップルのみなさんの期待を裏切らない結婚式をつくるのが重要だと思います。

◆思いを伝えることで、人生を前に進めるお手伝いをするー日本バウリニューアル協会 木原亜沙子さん

https://kekkon-ashita.weddingpark.co.jp/1208/

「バウリニューアル(Vow Renewal)」とは、すでに結婚しているおふたりが、おふたりや家族の節目を祝い、お互いへの愛を誓うセレモニーのこと。
欧米発祥の文化といわれ、最近では日本でも少しずつ知られてきています。

8年前からバウリニューアルを広める活動を続けてきた木原さんは、挙式自体が危ぶまれたコロナ禍で、結婚式場に求められる役割が変化していると感じてきたそうです。さらに結婚式場と、結婚するおふたりとの新たな関係性についても発見があったんだとか。

今後の結婚式場とおふたりの関係性、そしてこのコロナ禍についてこのようにお答えくださりました。

── 結婚式の延期やキャンセルが相次いだコロナ禍は、ウエディング業界に非常に大きな影響がありました。木原さんはコロナ禍の影響をどのように感じていらっしゃいましたか?

会員の方々から「お客様に対して何かして差し上げたいけれど、その思いをなかなか形にできない」というお話を聞くことが多くありました。結婚式の中止や延期を迫られたお客様の状況や心情に寄り添うためには、どのようなご提案をできるのか、悩んでいる方が多かったように思います。

── これまでは結婚式の日に集約されていた式場と結婚するおふたりの関係性が、コロナ禍によるさまざまな影響を機に変化してきているのでしょうか。

そうですね。結婚式の日だけでなく、挙式される前後にも焦点を当て、お客様に寄り添える方法を本気で考える企業が増えていると感じます。ですから今後は「式場」「プロデュース会社」といったカテゴリーではなく、「人生の節目をお祝いできる場所」として、式場の役割が変わっていくのではないでしょうか。

お客様にとって結婚式を挙げた場所は、夫婦や家族のスタート地点です。結婚した後から始まる長い人生で、お子さんの誕生や七五三、ご両親の長寿など、さまざまな節目が続きます。それらの記念日を式場でお祝いできたら、式場だからこそ持てる感慨や思い出せるエピソードもあるでしょう。

おふたりはさまざまな選択肢から式場を選んでいるのですから、式場はお客様との関係性を長く続けていくことをもっと重視できると思います。お客様の大切な場所である式場と、結婚式の後も人生を歩んでいかれるお客様をつなぐ接点として、バウリニューアルを活用していただけたら嬉しいです。

◆カップルに新たな選択肢と体験を。ー株式会社デコルテ 水間 寿也さん

https://kekkon-ashita.weddingpark.co.jp/1237/

コロナ禍でカップルからのニーズが急増しているのが、結婚の記念や結婚式の新しい形として写真を撮る「フォトウエディング」です。

結婚式を挙げるタイミングが難しい、小規模な式にせざるを得ないかも…。そんな悩みを持つカップルにとって、写真で結婚の証を残すフォトウエディングが新たな選択肢になっています。

「フォトウエディング」という言葉自体まだ一般的でなかった頃から、このジャンルを開拓してきた先駆者が、株式会社デコルテです。

業界でいち早くフォトウエディングを手がけ、現在は「STUDIO AQUA」をはじめとするスタジオを全国に展開しています。

20年以上にわたって奔走してきた水間さんに、コロナ禍によるフォトウエディングの変化と今後をうかがいました。

── コロナ禍で結婚式が延期になったり制約がかかったりするようになってから、フォトウエディングへの注目が一気に高まっています。デコルテではどのような変化がありましたか?

お問い合わせの件数だけでなく、ニーズも変化しています。今までは、ドレスか着物のどちらかで前撮りされる方がほとんどでした。ドレスは式で着るので前撮りは和装のみにするケースが、特に多かったですね。でも新型コロナウイルスの影響が出てからは、ドレスも着物も両方着たい、というニーズが圧倒的に増えました。

これは、コロナ禍で結婚式の延期が急増した結果、「結婚式の代わり」としての選択肢にフォトウエディングが入ったのだと考えています。本当は式を挙げたいけれど、挙式するか迷っていたり、いつ挙式できるかわからない状態で延期をし続けるのが難しかったりする方がフォトウエディングを選ぶようになって、知名度が一気に上がったのではないでしょうか。

── フォトウエディングへの注目が一気に高まった今、デコルテとしてあらためて大切にしたいと考えていることを教えてください。

僕たちはデコルテ立ち上げ以来、「フォトウエディング」の認知度と地位の向上を目標に掲げてきました。言葉としては少しずつ浸透してきましたが、もっと重要度を上げることはできると思うんです。ですからクオリティの高い写真を提供し続けることで、フォトウエディングの価値を高めていきたいと考えています。

── 価値を高める、というのは具体的にどういうことでしょうか?

海外では結婚したら写真を撮る文化が定着している国も多くて、インバウンドのお客様が撮影に割く予算は、比較的大きい傾向にあります。僕たちとしてはその分お客様のこだわりを叶えてあげやすいので、一生に一度の写真をより高いクオリティでご提供できるんですよね。

でも日本では、まずフォトウエディングにお金をかける文化が定着していません。だからこそ、僕たちが提供する「体験」をいかに楽しんでいただけるかが重要だと思います。撮影の時間が楽しくなければ、写真を後から見返すこともないじゃないですか。撮影で思い出をつくっていただき、後からアルバムを手に取っていただくことの積み重ねで、体験に価値を感じていただけるようになると考えています。

◆多様化するカップルの希望に応えられる結婚式場でありたいー株式会社CRAZY 松田佳大さん

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株式会社CRAZYは、コロナ禍のずっと前から新たな選択肢を生み出してきました。オーダーメイドウエディングを掲げ、おふたりだけにしか作り出せないオリジナリティあふれる結婚式を数々生み出してきましたが、2021年7月、オーダーメイドのウエディングサービスの提供数を縮小すると発表します。

CRAZYにとっても、大きな節目となったこのコロナ禍。今回のインタビューでは、マーケティング責任者を務める松田佳大さんに、世の中が急速に変化する今、CRAZYが考える「結婚」についてお話を伺ったところ、ご自身の経験もふまえて、結婚式の意義についてもお話してくださいました。

── コロナ禍における「結婚式」の変化はどのように捉えていらっしゃいますか?

前提として、結婚式ってふうふだけが納得して買うものではなく、両親やゲストのことも考えて式場を決めるので、なかなか買いにくいものだと思うんです。加えてコロナ禍でさまざまな考え方の人がいる今、気を遣う場面が増えましたよね。

この「気遣う要素の増加」は、式場選びにおける重要な検討項目になったでしょうし、カップルの選択はますます多様化・細分化していくと思います。

── 松田さんは「家族」をテーマにTwitterで発信されていますが、ご自身の経験を経て、結婚式の意義をどう考えていらっしゃいますか?

結婚式に限らず、ふうふや家族のお祝いごとは、ふうふでいることの意味に気づかせてくれる役割があると考えています。だからパートナーシップを続けていく上で、結婚式の後もお祝いの場はあったほうがいいと思うんです。

僕と妻は結婚6年目になりましたが、2人のタイプがかなり違います。僕はもともと身近なものを大切にせずに仕事に突き進んできたタイプで、妻は今ここにあるものを最も大切にする考え方。もちろん、だからこそ衝突もあったりします(笑)。

でもそれ以上に、気づかせてもらっていることがすごく多いんです。自分の身の丈じゃできないことをやりたいとき、いつも足りないものを補完してくれています。

── ひとりではできないことを後押ししたり、新たな気づきをくれたりする存在なんですね。

そうですね。今は子どもも二人いるので、日々のダメージは小さくありません。体力も気力も、すっからかんになることなんて日常茶飯事です。そんなときって、いくらお互いをリスペクトしあっててもやっぱり大切なことは見逃されてしまうんですよね。

それが現実だからこそ、大切な人の存在を「大切だ」と再認識する機会として、パートナーシップにおけるお祝いごとが大切だと考えています。IWAIでもパートナーシップを応援するプランをご用意しているので、人生の節目をお祝いする教会のように使っていただけたら嬉しいですね。

◆結婚指輪は「二人の人生に寄り添うパートナー」ーブライダルジュエリーブランド・ith(イズ)𠮷田 貞信さん、大橋 萌さん

https://kekkon-ashita.weddingpark.co.jp/1260/

コロナ禍では結婚式だけでなく、ジュエリー市場にも変化がもたらされました。結婚式が中止・延期になった分、婚約指輪や結婚指輪にお金をかける人が増えたと見られ、店舗での接客を重視してきたジュエリーブランドにも、次々にオンラインでの接客や販売が導入されました。

今回インタビューしたのは、D2Cのオーダーメイドブライダルジュエリーブランド・ith(イズ)です。ithでは創業からエンジニアが携わり、積極的にデジタル活用を進めてきました。そしてコロナ禍では2020年4月にオンラインアトリエを、6月にはオンラインストアを開設しています。

このようなスピーディーなデジタル化の背景にをithのブランド事業部長を務める吉田貞信さんと、ブランド事業部でアトリエマネージャーを務める大橋萌さんにお話をうかがいました。

どうやら、このコロナ禍で指輪への価値が見直されてきているようです。

── カップルの指輪選びは、コロナ禍で変化がありましたか?

大橋:指輪をこだわってつくりたい方が増えたように感じます。事前に下調べをして、自分たちのイメージを持って来店される方が増えました。好きなものがはっきりしていて目的意識が強く、「この要素は必ず入れたい」「みんなと同じにしたくない」というご要望が多いですね。

吉田:結婚準備のなかで最も工数がかかる式が中止や延期になるケースが増えたので、指輪にかけられる気持ちの余裕が増えたのだと思います。それから、カップルで一緒にお出かけする機会も減っていたので、指輪選びも受け取りも思い出づくりという捉え方をする方が増えました。

── コロナ禍で、あらためて指輪の価値が見直されているのかもしれませんね。

吉田:指輪が徐々に日常に馴染んでいく過程で、ずっと肌に触れているからこそ思い入れが増しますよね。例えば喧嘩をしても、指輪を見たら謝ろうと思える場面もあるでしょう。だから指輪って、結婚したお二人の歩みに生涯寄り添ってくれる人生のパートナーだと思います。そういう価値をあらためてお届けしていきたいですね。

大橋:お客様にはよく「50年先も身につけるものですからね」とお伝えしています。メンテナンスしたり、子どもが生まれたら誕生石を後から入れたりして長く使っていただけるよう、サポートしていきたいです。指輪と一緒に思い出を増やしていっていただけたら嬉しいですね。

吉田:自由な結婚式ができない状況が続いていますが、カップルのみなさんが足を止めずに前に進んでいけるように、僕たちのできることを全力でサポートしていきたいです。