業界誌キーパーソンが語る「変わりゆく業界と発信者の使命」

新型コロナウイルス感染拡大により世の中が大きく変わろうとしている今。働き方、遊び方、お金の使い方など、個人の価値観が変化し、それに伴って様々なサービスがアップデートされるなか、ウエディング業界も大きく変わり始めています。

ウエディングパークでは、新たな取り組みにチャレンジしているウエディング業界の方々をオンラインで取材していく企画「#ミライケッコンシキ-ミライの結婚式のためにイマ私たちができること-」 を2020年5月よりスタート。結婚式場、業界団体、業界誌など、様々な分野で活躍する方を取材してきました。

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10名を超える方々への取材を通して、私たち編集部は一つの答えに辿り着きました。

みんな今までと変わらず結婚式が大好きだということ。
そしてどんな状況下にあっても一番にカップルの幸せを考えているということ。

本企画では、#ミライケッコンシキで取材してきた結婚式場や業界関係者の方々の最新の取り組みや、未来の結婚式のために、歩みを止めず、ひたすらに一歩一歩前進し続ける人たちの想いをまとめたものです。

記事を読み進めるにあたり、言葉のひとつひとつから「想い」を感じてもらい、その「想い」が結婚式を検討しているカップルや業界の皆さまにとって、未来の結婚式への不安や戸惑いではなく、ひとつの光となりますように。

「『本当にいい結婚式とは何か』」を考えるチャンス The Professional Wedding

新型コロナウイルス感染症の影響がウエディング業界を直撃し始めていたさなか、The Professional Weddingは2020年4月22日発売号で「各社が磨くプランナー評価制度」を特集した業界誌『The Professional Wedding(ザ・プロフェッショナルウエディング)』。

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10年間ウエディングの変化を追ってきた業界誌『The Professional Wedding』が考える、結婚式の新たな選択肢とプランナーの役割【 #ミライケッコンシキ Vol.2】

編集長の石渡雅浩さん、ディレクターの桑田和代さんは、「今回の新型コロナウイルス感染症は、今後の結婚式にどのように影響してくると思われますか?」という問いにこう答えてくれました。

石渡:オンライン結婚式も登場していますが、同じ場を共有する意味が浮き彫りになった面もありますから、全ての結婚式がオンラインに切り替わるわけではないと考えています。むしろ「ナシ婚」でいいと思っていた人が、オンラインの挙式に興味を持つ可能性もあるでしょう。

プランナーにとっては「本当にいい結婚式とは何か」を考えるチャンスです。これまでは料理のコースや演出のプランなど、ある程度フォーマットがありました。しかしこれだけ世の中が変わると、新郎新婦にもゲストにもさまざまな考えの方がいらっしゃいますから、パッケージが意味をなさなくなります。

固定観念にとらわれずに、サービスをゼロから組み直す必要がある。このようなときにこそ、新郎新婦と一緒にベストな結婚式のあり方を考える、プランナーの仕事の真価が問われると思います。

桑田:私も同じように、「自由じゃないから結婚式をやりたくない」と思っていた人に、これまでになかったスタイルを提案するチャンスだと考えています。

人と人とがつながる意味をあらためて気づかされた今、一人ひとりに合った結婚の証を残す時代に向けて結婚式の価値をどのように伝えていくのか、プランナーの仕事がますます重要になると思います。ですから当誌としても、現場の皆さんがご自分の仕事の価値を信じられるような発信を続けていきたいですね。

「会社の枠組みを越えた連携を促進していきたい」 ブライダル産業新聞

ウエディング業界のビジネス専門紙として網羅的に情報発信してきた「ブライダル産業新聞」。新型コロナウイルス感染症の影響が見られ始めた昨年3月以降、「ウエディング業界から感染者を出さないように」との思いで、普段よりもさらにスピーディーな情報発信に注力している業界誌です。

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各社の取り組みを共有し、業界全体で感染拡大を防ぎたい。業界の専門紙「ブライダル産業新聞」が担う役割とは?【#ミライケッコンシキ Vol.7】

5年間デスクを続けてきた権藤咲さんは「新型コロナウイルス感染症の感染状況が日々変わっていくなかで、ブライダル産業新聞として今後どのような役割を担っていきたいですか?」という問いにこう答えてくれました。

”もしも一つの式場から集団感染が確認されたら、すぐさま影響が業界全体に波及しかねない今、結婚式において重要なのは感染者を出さないという取り組みと、仮に出てしまったとしてもその後の早急な対応を取ることだと考えています。

お客様からの信頼を獲得するために何ができるのか、安心・安全をどう提供していくのか。感染の発生を防ぐためには、「A社がこういう対策をした結果、お客様が安心して来館している」といった他社の取り組みを知っておく必要があります。

6月からは各社が考えてきた次の一手が動き始め、余ったドリンクを幼稚園に提供したり新たなフォトプランを発表したりと、ようやく明るいニュースも増えてきました。私たちのようなメディアが少しでも業界の力になれる情報発信を心がけ、会社の枠組みを越えた連携を促進していきたいと考えています。

式場の挑戦を後押しできる情報発信を続けたい ウェディングジャーナル

業界向けの経営情報誌「Wedding Journal(ウェディングジャーナル)」。本誌の特徴は、一つのテーマを深掘りすること。2020年2月25日号からは新型コロナウイルス感染症による業界への影響の特集を開始し、その後も連続して新型コロナウイルスの影響と今後の結婚式のあり方を取り上げています。

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変化を迫られている業界の「覚悟」を後押ししたい。業界誌「ウェディングジャーナル」が目指す、情報発信のその先【#ミライケッコンシキ Vol.9】

前職の頃からウェディング業界で18年にわたって記者を続け、ウェディングジャーナルに創刊から携わっている後藤祐一さんは「業界がこれまで続いてきた慣習を見直すべきときが来ている今、業界誌としてどのように情報を取り上げていきたいですか?」という問いにこう答えてくれました。

”これまでと同じように、業界の方が求めている情報を積極的に出していきたいです。一つはノウハウ。経営者が何を考え決断してきたのか、プランナーさんがどう接客しているか、どうやって新しい取り組みを現場に導入したのか、といった具体的な情報をお届けしていきたいと思います。

今まで続けてきた慣習をいきなり変えるのは大変なことですし、「覚悟」を決めるにしても情報がなければ決断できません。理想の状態としては、マニュアルのように「ウェディングジャーナルを読めば、やったことのないことにチャレンジできた」と思っていただける状態を目指したいです。

もう一つ、経営層の方だけでなく現場で頑張っている方にもフォーカスしたいと思っています。普段なかなか取材されないプランナーさんも、私たちの取材を通じて自分のなかにある情報を整理できたとお話いただけますし、また客観性のある気づきを得られたりする機会になるはずです。

今回の新型コロナウイルスによって、私たちは業界誌の存在意義を考えさせられました。ウェディングジャーナルが大切にしてきた「業界が前に進むための情報発信」が、これからどう求められていくのか。業界誌はどのように結婚式の可能性を広げていけるのか。私たちももう一度「覚悟」を決めて、発信の意義と向き合っていきたいです。”

「業界の未来のために、私たちが羅針盤になる」HOTERES

1966年に創刊、毎週約15,000部発行しているホテル・レストラン業界唯一の専門誌「週刊ホテルレストラン」(以下、「HOTERES(ホテレス)」)は、コロナ禍でも毎週発行を続けてきました。

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50年以上続く業界専門誌「週刊ホテルレストラン(HOTERES)」が捉えた、コロナ禍におけるホテルの今とこれから 【#ミライケッコンシキ Vol.10】

HOTERESの発行元である株式会社オータパブリケイションズ 執行役員 山下裕乃さんはHOTERESでは取材を重視されてきたかと思うのですが、緊急事態宣言が発表されて取材が難しくなってからは、どのように運営していたのでしょうか?」にこう答えてくれました。

“発行の体制としては、緊急事態宣言の期間中でも変わらず週刊です。特集に即したホテルやレストラン、その他業界関係者からの寄稿を増やしたので、結果的に4〜5月は読みものが多くなりました。

それから緊急事態宣言を機に、会員制の「週刊ホテルレストランオンライン」の記事を3ヶ月間無料で読めるようにしました(※ 現在終了)。状況が日々変化していくコロナ禍で、紙媒体の情報発信を補うための施策です。

また業界誌を制作する側の使命も語ってくださいました。

“業界誌の役割は、業界を伸びていく方向に案内する羅針盤だと私は思います。そのためには、わずかな動きをいち早くキャッチして、その変化はなぜ生じているのか、どのような意味を持つのか、推測と裏付けを取りながら結論を出す。時に誰かから嫌われるかもしれないメッセージであっても、今後の業界に必要な発信を続ける。これが私の仕事だと思って、これからも続けていきます。”

 

※本記事は連載「#ミライケッコンシキ」を再編集したものです。

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