変わるウエディング業界。つくり手たちが語る「これからの結婚式」

新型コロナウイルス感染拡大により世の中が大きく変わろうとしている今。働き方、遊び方、お金の使い方など、個人の価値観が変化し、それに伴って様々なサービスがアップデートされるなか、ウエディング業界も大きく変わり始めています。

ウエディングパークでは、新たな取り組みにチャレンジしているウエディング業界の方々をオンラインで取材していく企画「#ミライケッコンシキ-ミライの結婚式のためにイマ私たちができること-」 を2020年5月よりスタート。結婚式場、業界団体、業界誌など、様々な分野で活躍する方を取材してきました。

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10名を超える方々への取材を通して、私たち編集部は一つの答えに辿り着きました。

みんな今までと変わらず結婚式が大好きだということ。
そしてどんな状況下にあっても一番にカップルの幸せを考えているということ。

本企画では、#ミライケッコンシキで取材してきた結婚式場や業界関係者の方々の最新の取り組みや、未来の結婚式のために、歩みを止めず、ひたすらに一歩一歩前進し続ける人たちの想いをまとめたものです。

記事を読み進めるにあたり、言葉のひとつひとつから「想い」を感じてもらい、その「想い」が結婚式を検討しているカップルや業界の皆さまにとって、未来の結婚式への不安や戸惑いではなく、ひとつの光となりますように。

「結婚式の本質は、これからも変わらない」ノバレーゼ

全国で32の結婚式場を運営する株式会社ノバレーゼ。新型コロナウイルスの影響で結婚式を延期する方を対象に引菓子を買取したり、テレビ会議システム「Zoom」で式場見学を可能にしたりと素早く対応を打ち出し、結婚式に関する明るいニュースを提供してきました。

オンライン化によって再認識した結婚式の本質とは?ノバレーゼが考える、これからの結婚式【 #ミライケッコンシキ Vol.1】

広告宣伝や商品開発を担当している、営業戦略ディビジョンの責任者である諏訪真紀子さんは「新型コロナウイルスの影響で、人の集まる場がこれから変容を迫られていくかもしれません。結婚式はどう変化していくと思いますか?」という問いにこう答えてくれました。

”私個人としては、結婚式の形が変わろうと、コアは変わらないと思います。太古の昔から古今東西、二人が結婚するときにお祝いする文化が受け継がれてきました。自分たちに関わってきた人たちが一同に集い、「自分はこの人たちに支えられてきたのだ」と感じられる。これは結婚式の大きな価値ではないでしょうか。

ですからノバレーゼはこれまでもこれからも変わらずに、参列される方全員に楽しんでいただけて、二人の門出をみんなで祝える結婚式を目指していきます。そのためには自分たちが楽しみながら、お客様に幸せをお届けできる結婚式の意味を誰よりも自分たちで信じていきたいです。”

「『どうしたらお客様に会えるのか』を必死に考えた」 ひらまつ

一軒のレストランから出発し、2021年にウエディング事業スタートから30周年を迎える株式会社ひらまつ。新型コロナウイルス感染症の影響に対していち早く動き始め、休業期間に安全対策の徹底と可視化に注力した上で、2020年5月22日にレストランの営業再開を実現しました。

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早くお客様に会えるように。ひらまつが休業期間中に注力した「安全・安心の可視化」の舞台裏 【 #ミライケッコンシキ Vol.3】

ひらまつウエディングのホームページには、衛生管理と安全対策の基準「Hiramatsuスタンダード」や「結婚式応援プロジェクト」など、新郎新婦に安心と笑顔を届けるお知らせが並んでいます。ブライダル統括の吉野里絵さんは「これからの結婚式」について、こう答えてくれました。

”歴史を振り返ってみれば、過去にさまざまな感染症があっても結婚式という文化は続いてきました。これからも、集うことを人はやめないと思います。

むしろ大変な出来事があった後の結婚式は、もっと優しく広がりのあるものになると思うんです。例えば今回注目されたオンラインツールを活用すれば、これまでより遠く、広くつながれると教えてもらいました。

このような広がりがあるとわくわくしますし、オンラインでもつながれるからこそ、お店に来ていただいたときにお届けできるリアルの価値も高まると思っています。誰かに会える嬉しさ、画面だけでは分からない価値をお伝えしながら、現場のみんなで一組ずつ大切に結婚式をつくりあげていきたいですね。”

「お客様のことを考え続けたら、やるべきことが見えてくる」 原宿 東郷記念館

昨年、2020年2月。政府が全国の学校に対して一斉に休校を要請した時点から、延期料の規定をいち早く変更し、同年5月6日には、ライブ配信で届ける結婚式「東郷 LIVE WEDDING 〜祝言〜」をリリースした原宿 東郷記念館。

結婚式の延期をいち早く決断した東郷記念館が、「オンライン結婚式」に込めた思いとは?【 #ミライケッコンシキ Vol.4】

「スピーディーにお客様に寄り添った施策を、次々と実現できた理由」「これからの結婚式への姿勢」についてこう答えてくれました。

”私たちが大切にしている「東郷イズム」がいくつかあり、代表的なものが「損して『徳』を取れ」です。全ての答えはお客様がお持ちであり、式場の都合をお客様に押し付けるべきではありません。自分が苦労してでも、お客様に「東郷記念館でよかった」と思っていただきたい。そのような意味が込められています。

ですから今回も、大変なときほど常にお客様に想いを寄せてきました。そうすれば自ずとやるべきことが見えてきますから、その考え方が施策の実現につながったのだと思います。”

”人と人とのご縁を感じたり、感謝を伝えたりできる結婚式場の文化を残していこうと考えています。そのためには今後も変わらずに、私たちが「正しい」と思うことをお客様にお届けしていきたいです。”

「これからも『一番のサポーター』であるために」 八芳園

2020年4月の緊急事態宣言の期間中に営業を休止し、その間に「オンラインウエディング相談会」をスタート、企業活動を再開する2020年6月1日に合わせ、安心安全を可視化する32のピクトグラムと新しいスローガンを発表。「これから、を歩む。」「あなたと生きる、地球を想う。」と2つのコピーを掲げた株式会社八芳園。

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オンラインでも成約率の目標を達成。八芳園のお客様満足度を支えた秘訣は「チーム力」にあり【#ミライケッコンシキ Vol.5】

昨年6月に新しく掲げられた八芳園のコピー「これから、を歩む。」「あなたと生きる、地球を想う。」。婚礼課マネージャー・ブライダルアドバイザーの湯村奈央さんは「チームの一員として、今後どう歩んでいきたいですか?」という問いにこう答えてくれました。

“オンラインでの出会いとつながりを、創造的にプロデュースする必要があると感じています。今回のコロナ禍で強く気づかされたのは、人と人とのつながりがもたらす喜びでした。直接会えなくなってしまったとき、オンラインでもつながっていると感じられるかが重要だと考えます。

結婚式でいえば、これからもプランナーがお客様にとって一番のサポーターであるために、コミュニケーションをどう設計していくのか。これが今後の私たちに課されたミッションだと考えているので、チーム間で連携しながら「これから、を歩む。」体制をつくっていきたいです。”

「ウエディング業界が、お客様の変化に寄り添えるように」 オフィース・マリアージュ

お二人をフォローするアテンダーを育てるために1983年に創業し、自ら式場との間に立って新郎新婦のサポートを続けてきた、ウエディングプロデュース事業と挙式運営を手がける株式会社オフィース・マリアージュ。

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結婚式の真髄は「誓い」にあり。安部トシ子さんに聞く、結婚式の形式を変える今こそ目を向けるべきこと 【#ミライケッコンシキ Vol.6】

「コロナ禍で業界が変化を求められるなか、今後どのように仕事をしていきたいですか?」という質問に、代表取締役・安部トシ子さんはこう語ります。

”業界よりも前に、日々お客様が変化しています。業界主導でお客様にアプローチするのではなく、お客様の変化に対して業界が寄り添える方法を考える。これから求められていることはもっとお客様目線だと思います。

一番辛いのは、新郎新婦です。私たちも仕事ができなくて辛いですし、業界のみなさんも大変だと思うのですが、どんな対応があったら新郎新婦は安心できるのか考えることを、私はあきらめたくない。「私たちはこういうことをできますよ」とどんどんお伝えしたいですし、会場のみなさんにもぜひ発信してほしいです。

それに、コロナ禍を経て結婚を検討する方もたくさんいます。これからも結婚式はなくなるわけではありませんから、結婚式の真髄を新郎新婦に感じていただくために自分は何ができるのか、常に考えていきたいです。”

「これからも、時代に合わせた結婚式を実現できる」 公益社団法人 日本ブライダル文化振興協会

ブライダル業界に新型コロナウイルス感染症の影響が生じた2020年。2月後半から行政機関とのやりとりを続け、5月14日には結婚式場業「新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドライン」を発表した公益社団法人 日本ブライダル文化振興協会(BIA)。

「一刻も早く、事業を再開できるように」。日本ブライダル文化振興協会(BIA)、ガイドライン策定の舞台裏【#ミライケッコンシキ Vol.8】

BIAの事務局長を務める佐々木貴夫さんは、「今後BIAとしてどのように動いていきたいか」について、こう語ります。

”今回のコロナ禍を経て、式場単位でお客様に安心して結婚式を楽しんでいただけるよう、業界内での横の連携が進んでいます。ひらまつ八芳園では、BIAのガイドラインをベースに自社のガイドラインを策定し、ピクトグラムを業界向けに共有されていましたね。

このように、それぞれの式場が横の連携を強化したり工夫して新たな取り組みをしたりと、業界がよりよくなる動きがたくさん生まれています。これらを式場とは異なる立場で発信したり、行政機関への働きかけによって促進したりして、時代に合わせた形式でこれからも結婚式を挙げられるんだと伝えていきたいです。”

「結婚式で悲しまれているお客様のお役に立てたら」 一般社団法人かながわ西結婚推進協議会

新型コロナウイルス対策のために式場どうしの連携が注目される今、以前から式場ごとの「点」ではなく「面」として発信していた神奈川県西部。一般社団法人かながわ西結婚推進協議会は、箱根・小田原で結婚式場を持つホテルやレストラン、ゲストハウスなど、10の企業が集まって立ち上げたものです。

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箱根・小田原エリアが、結婚式場どうしで連携できる理由。かながわ西結婚推進協議会の闘い方 【#ミライケッコンシキ Vol.11】

かながわ西結婚推進協議会に加盟しているヒルトン小田原リゾート&スパのウエディングプランナーであり、協議会のメンバーとしても活動されている浜田友里菜さんは、「コロナ禍における協議会の役割」についてこう語ります。

“「箱根&小田原のハッピーウエディングフォトプラン」を2020年5月からスタートしました。このエリアで思い出を残していただくために、協議会で考えた施策です。

特に4〜6月、やむを得ず結婚式をキャンセル・延期される新郎新婦が増え、私たちプランナーはお客様が悲しんでいらっしゃる場面に何度も向き合ってきました。そのようななか、お客様にどんな思い出をご提供できるかを協議会で考えたんです。

もともとフォトウエディング自体は施設ごとに用意していましたが、このコロナ禍において、協議会で新たなフォトスポットとして「箱根のぶらんこ」を用意しました。地元の木材を使用し、地元で植林されている方々が選んだ場所に設置しています。フォトスポットとして、エリアの知名度向上にもつながったら嬉しいです。

おかげさまでキャンペーンはご好評いただいていて、首都圏だけでなく愛知県や福島県のお客様も含め、50組以上にお申し込みいただきました。

お申し込みの際に理由を書いていただいたら、結婚式を予定していたものの、コロナで延期した方がほとんど。特に多く見られた理由が、延期できたとしても遠方の家族が出席できるか分からないので、せめて写真を見せてあげたい、というものです。結婚式で悲しまれているお客様のお役に立てていたらいいなと思っています。”

※本記事は連載「#ミライケッコンシキ」を再編集したものです。

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