ウエディングパークZ世代デザイナーが「Wedding Park 2100」特別イベントで“得たもの”とは

2023年3月21日から「渋谷区立宮下公園」(MIYASHITA PARK屋上)と「グランフロント大阪」で開催された「Wedding Park 2100」特別イベント「Parkになろう—結婚式は未来の新しいパブリックに—」展。同イベントで、ウエディングパークのZ世代デザイナー4人が手掛けた作品が展示されました。

タイトルは「じぶんいろを叶える『まほうのブティック』」

会場に吊るされたさまざまな価値観をイメージしたハンカチの中から、来場者は自分が大切にしたいと思う価値観のハンカチを取り、結婚衣装の形に切り抜いたパッケージに入れて、自分らしい結婚のあり方を表現する――。普段はウエディングパークでWebデザインを中心に担当している彼らが作りあげた体験展示の反響はどうだったのでしょうか。イベントを終えた心境や新たな発見などを聞きました。

――Wedding Park 2100特別イベントを終えて、率直な感想を聞かせてください。

鈴木拓光:頑張ってよかったです。準備しているときはどういう反応をもらえるかわからなかったり、大変だったりすることも多かったですが、来場者の方が実際に手に取ってくださり素敵な反応もいただけました。

ウエディングパーク デザイナー 鈴木拓光

大橋なつみ:企画から制作、設営も手がけたので振り返ってみると山ばかりの日々でしたが、来てくださった方の反応や手応えを見て、今は達成感とともにホッとしています。

ウエディングパーク デザイナー 大橋なつみ

笹原光:みんなでヒーヒー言いながら準備していたのですが、イベント当日は年齢や国籍関係なくいろんな人が楽しんでくださっている姿を間近で見ることができたので、笑顔を届けられている実感がすごく湧いて感動しました。

社内でも「この4人はチームワークが良い」とほめてもらえたんです。「誇りのチームだよ」といってもらえたことも、とても良かったなと思います。

ウエディングパーク デザイナー 笹原光

鈴木ありさ:私も無事やりきったという安心感と達成感が強いです。本番前の約1週間は連日みんなで缶詰め状態で作業したこともあったけど、まるで文化祭前のような、青春みたいな感じでした。そういう過程も楽しかったし、一緒に一つのものを乗り越えられたのがチームの一員として嬉しくて。イベント当日、来場者の皆さんがハンカチを選んでいる光景を見て、その苦労が報われたように感じました。

ウエディングパーク デザイナー 鈴木ありさ

――現地で気づいたことや発見になったことはありますか。

鈴木拓光:結婚や結婚式に関することを考えるきっかけを作る大切さを実感しました。今の若い世代にはそうした機会は少ないし、結婚業界は良い意味でも悪い意味でも閉鎖的なところがある。きっかけが少ないと結婚に対しての興味が湧きづらい面もあると思うんです。そういう機会をどんどん作っていくことが大事なんだなと、改めて気づけました。

あとは、体験を空間で伝えることの難しさです。今回のハンカチを選んで詰める体験も、やはり近くに誰かが立って説明しないと来場者に趣旨が伝わりにくかったなと反省しました。とても学びになりましたね。

大橋なつみ:私もその体験の部分がすごく学びであり、気づきでもありました。

弊社で「デザイン経営」がスタートして以来、ユーザーの気持ちになったものづくりを進めていますが、今回のイベントでは「すごく良かったよ」とその場で直接感想を伝えてくださる方が多く、ダイレクトに反響を感じることができました。でも逆に、来場者の皆さんの様子を見ていて“体験”にハードルを感じてしまった方もいるなとなんとなく分かりました。気になっている素振りはあるけど入っていけなかったり、少し不安そうな表情だったりと、そういう方は態度や視線、動きに出るのかな、と。

一言で「現場の反応」といっても、いろんな視点から見ることでネガティブな部分もポジティブな部分もたくさんのものを見つけられるというのは、すごく学びになりました。これはWebデザインだけをやっているとなかなか得られなかった経験だなと思います。

鈴木ありさ:来場いただいた方がそれぞれの楽しみ方で体験をしてくれたことで、私たちの作品がもっと広がったなと感じました。一緒に来た人とお互いにプレゼントし合う予定でハンカチを選んでいたり、ハンカチの折り方を立体的に工夫し、ドレスっぽくパッケージに入れて楽しむ人もいたり、私たちもハッとさせられるような瞬間がありました。来場者の皆さんが体験の楽しみを広げてくださったことが、すごく嬉しかったです。

笹原光:想像以上にいろんな年代や国籍の方が楽しんでくださっていたのが一番嬉しかったです。身長を問わずハンカチをすんなりとれるよう、設計は細かいところまでこだわったのですが、お子さんがジャンプしながら取る様子など、自分たちの想像以上にできたことが本当に嬉しかったですね。

ただ、同時に、見てもらうのではなく体験していただいた上で、ご自身の価値観の発見を促すハードルの高さを感じました。もっと体験のデザインなどを学んだり試したりしていけば、より価値が高められそうだと感じたので、自分自身が今後やっていきたいことも見つけることができました。

――当日現場で印象的だったエピソードはありますか。

大橋なつみ:ハンカチをパッケージに入れる際に、来場者の方がアレンジをしてくださったことです。向きを変えてみたり立体的に引き出してみたり、私たちが想定していた以上のことをやってくださったんですよね。最初は「こうしてほしい」と思う部分があったのですが、作り手が決め付けすぎるのもよくないかもと感じました。例えば公園でも、砂場で砂を固める子がいれば、水を流して川を作って遊ぶ子もいます。それって、このイベントの「Parkになろう」というコンセプトともすごく近いもので、アレンジして幅を広げて楽しんでくれたのは、とても印象的だったなと思います。

笹原光:私は、おそらくカップルの方が、お互いの選ぶハンカチを予想しながら「いっせーの!」ってとっていたのが印象的でした。柄じゃなくて価値観で選んでほしい、それがきっと自分らしさを考えるきっかけになると重要視していたので、生き生きした表情で楽しんでくださっていることが胸に残りましたね。

鈴木ありさ:お父さんが娘さんにハンカチとパッケージを選んでいた様子が、とても温かくていいなと思いました。「もし結婚式で着るとしたらどんな衣装の型がいいか選んでみてください」と声をかけたら、「娘にはこれがいいかな」と選ばれていて。家に帰って渡している姿を想像したら、胸が熱くなりました。

鈴木拓光:僕はハンカチのデザインを担当したのですが、ある来場者の方にデザインの説明をした後「部屋に飾ります」と言ってくださったんです。デザインは幾何学アートのような表現にしたのですが、そういうふうに言っていただけたのは作り手としてとても嬉しかったです。

――力を合わせて一つの作品、プロジェクトを作り上げた経験を通じて、自分自身とチームで成長したと思えるところを教えてください。

鈴木ありさ:今回学んだのは、どんどん人に聞きに行く大切さです。ハンカチのキャプションを考えているとき、自分たちだけで考えずに先輩の意見などを聞いていたことで、とても速くブラッシュアップできたんです。普段のWebデザインではかなり固めてから周りの意見を聞くことが多かったのですが、早くから聞くことでフラットな目線で進められることが分かったので、今後に生かすべきだと学びました。

また、このチームは「あきらめない」ところがいい。設営でも発注でも、最初の理想通りにいかないところもありましたが、できないとあきらめるのではなくできる方法を探したり、話し合いで意見が割れてもそれぞれのいいところを探して最高の形を目指したりしていました。

実は本番前日に、みんなで血眼になって作ったハンカチを吊るすツール200個が使えなくなるというハプニングが起きたんです。そんなハプニングもみんなの根性でなんとか乗り越えました(笑)。

笹原光:空間のデザインは、体験デザインを考えた上でどういう空間が必要かという順番で考えていくことが必要です。そのプロセスをできたのが、今回の一番大きな学びになりました。自然に人の心を動かして行動に促すのがデザインだと思うのですが、体験のデザインにはその力が詰まっていると考えています。正直、今回悔しいと思う部分もありましたが、普段のWebデザインではできないところまで挑戦できたのはよかったです。

私たちはもともととても仲が良かったのですが、4人で一つのものを作るのは初めてでした。だからといって誰かの意見に迎合したり丸く収めたりするのではなく、何が一番大事なのかを突き詰められたことが、良いチームになれた要因かなと思います。4人とも共感する力や尊重する気持ちが強くて、全員の口ぐせが「確かに」なんです。もしも自分と全く違う意見でも、必ずひと言目は「確かに」と意見を尊重して、そのうえでちゃんと自分の意見を主張しながらやってきました。

鈴木拓光:スケジュールがかなりタイトだったのですが、短い期間で抽象的なものを具現化する力がついたと思います。価値観の言葉からコンセプトを言語化してデザインに起こしたのですが、例えば「思いやり」はとても抽象度が高くて、具現化するにもきっとたくさんの正解があります。その中で今回最適解になるものは何か、しっかり決めて形に起こす能力が上がったと、個人的には感じています。

チームで成長したポイントは、それぞれの強みや長所を理解できるようになったことです。チームで何かやるときは、お互いの強みや弱みを把握していた方が連携や進め方もうまくいくと思うのですが、改めてそれぞれの長所に気づくきっかけになりました。

大橋なつみ:自分たちのこだわりを求め続けたことが大きいです。初めての挑戦ですし、イベント内で唯一ウエディングパークの名を背負ってブースをやることに正直すごくプレッシャーを感じていました。ただ、Webならではの制約にとらわれずに伝えたいメッセージを追求できたことは新しい経験でしたし、今後も大事にしていきたいです。

4人全員がこだわりを追い続けたのもよかったですね。その前提があったからこそそれぞれの強みがはっきりして、任せる部分は任せつつ全員でやりきるところはやりきるという、メリハリができたと思います。

――今回の経験を通じて自分やチームの成長を実感できたと思います。今後、皆さんがデザインの力で叶えていきたい未来について教えてください。

大橋なつみ:今回の経験でWebデザインもこういう展示も、利用者の笑顔を作るという点では一緒なんだと感じました。

サービスをみてちょっと笑顔になれたり楽しいと思ったりしてもらえることは、そのあとに使ってもらう原動力になります。今までは目の前の課題を解決するデザインにとらわれてしまっていましたが、本当に自分がデザインしたいことは、その後の笑顔を作ることなのだと気づきました。作ることにとらわれずに、使ってもらったあとのことまで考えながらデザインできるデザイナーになりたいです。

鈴木ありさ:今回のイベントで私が大切にしていたのは、ワクワクしながら楽しんでもらえることだったように思います。当日、いろんな方がハンカチを手にとってワクワクした表情で自分の価値観や結婚式の衣装を考えてくれるのが本当に嬉しかったんです。今後も、ただ情報をわかりやすくまとめるだけでなくワクワクを再現できるようなデザイナーになれたらなと感じています。

鈴木拓光:考えるきっかけや必要とされるものを創出していきたいです。考えるきっかけを作ることで最終的に新しい当たり前が生まれることにつながる、それはデザインで絵になって体験できるからこそだと思います。そんな流れを、デザインの力で作っていきたいですね。

笹原光:私たちのチームは3年後に「みんなの幸せのためにデザインの力で新しい当たり前を作る」という目標を掲げています。社会を“自分ごと”化するために「みんな」と表現しているのですが、それが何かが難しく、ちゃんと理解できていなかったんです。ただ、今回の経験を通して、いろんなポジティブの選択肢があることを知る機会が、自分らしく生きるために一番必要だと感じました。そうした選択肢をたくさん知ってもらえる、ワクワクしながら体験してもらえるような機会を、デザインの力でどんどん作っていきたいと思っています。

――最後に今回体験してくださった方にメッセージをお願いします。

鈴木拓光:ご来場くださり、作品を手に取ってくださってありがとうございました。結婚に対して少しでも身近に感じてもらえたり、こういう選択肢もあるんだなと思ったりしていただいて、結婚に対してポジティブなイメージを持っていただけたら嬉しいです。

大橋なつみ:パッケージにも記しましたが、従来どおりの結婚も新しい選択肢も、それぞれ尊重される大事なものです。みんながいろんな選択肢を受け入れられるような世の中になれるよう、今回の体験を通じてちょっとでも感じていただけたらいいなと思います。

笹原光:私たちは、必ずしも結婚は幸せなものだと押し付けたいわけでなく、結婚にポジティブなイメージを持ってもらえるような機会にできたらと考えて今回展示をつくりました。結婚という幅を超えた“自分らしさ”がキーワードになっています。衣装も性別は関係なく、質問されても「自由に選んでください」と説明させていただいた通り、誰かが決めた当たり前にとらわれすぎず、自分らしさを大事にするという思いが伝えられていれば嬉しいです。

鈴木ありさ:手に取ってくれたハンカチとパッケージを日常生活の中で見たり手に取ったりした瞬間に、選んだ価値観をパートナーの方と一緒に思い出してくれたら嬉しいなと思います。

( 取材:大井あゆみ  文:西沢裕子/写真:伊藤メイ子 / 企画編集:ウエディングパーク

 

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